( ・ω・) ねぶろぐ

管理人ねぶおが、書評・料理・風物などについて気ままに語る。

アブサン チェコ

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アブサンといえば種類は色々あるが、またよりによってというか、紹介するのはこの「アブサン チェコ」。良く言えば『異色のアブサン』、悪く言えば『アブサンの名を騙る偽物』だろうか。

ラベルにはただアブサンとデカく書かれており、他にもグリーンツリーだとかフェアリーだとか銘柄に関係しそうなワードが書かれているが、この酒がそういう名前で呼ばれることはなく、大体「アブサン チェコ」という名前で通っている。

(実際妖精のイラストが描かれているし、裏側のラベルには「アブサン フェアリー」と書いてあるのだから、それでいいじゃんと思うのだが、何故頑なに「アブサン チェコ」と呼称されているのかは謎。どっからチェコなんて文字列が出てきたんだ?)

 

基本、アブサンという種類の酒に共通して言えるのは、水を加えると濁るということ。これは加水することでアブサンの中に溶けていた脂質などの非水溶成分が析出し、それが光を乱反射するから濁って見えるというワケだが、この「アブサン チェコ」はそれがない。水で割ろうと炭酸で割ろうとクリアなまま。

そしてアブサン特有のアニスフレーバーも無いに等しい。よくこの酒のキャッチコピーで「ニガヨモギの風味が支配的」と書いてあるのを見かけるが、まぁ物は言いようだなといった感じで、身も蓋もない言い方をするとありふれたミント風味。

また大方のアブサンが黄緑系の色なのに対し、こいつは怪しいくらい綺麗にライトグリーン。前述の風味も相まって、間違えてマウスウォッシュでも飲んでんじゃないかという錯覚に陥る。

 

こういった有様だから、これをアブサンの中に位置づけていいのかどうか頗る疑問だが、別にアブサンの製法に明確な定義があるわけでもないので、メーカーがアブサンと名乗っている以上アブサンなのだろう。

とはいえ、これだけ一般的なアブサンと方向性が違うのだから、同じ飲み方をするのも何だ。色は(すごい人工的だが)綺麗なグリーン、ミント風味、割り物で濁らないという特徴があるのだから、ライムでも加えてソーダ割りやトニック割りにしてしまうのが一番いいのではないだろうか。

ただし度数が70度もあるので、割ったからといって油断して飲み続けるととんでもない目に遭う、いいね?

 

ちなみにこれは余談なのだが…

昔内輪で20人くらいを集めてパーティースペースで催しをやることになった。僕はいくらか自前で酒を持っていこうと申し出て、それらの中にこの「アブサン チェコ」も含めていた。正直買ったはいいが持て余し気味で、できるだけパーティーで消化して欲しかったのだ。

前日、僕はこのパーティーの幹事である友人に直接参加費を渡しに行き、ついでに長い時間話し込んだのだが、その友人は参加者の面々が企画の舵取りを頼んでくる割にどこか他人事で、会場のセッティングなどに非協力的であることを嘆いていた。(僕などは、自前で酒を進呈しているだけまだ貢献できていたようなのだが)

そして当日、その友人は僕が持っていった「アブサン チェコ」を炭酸で割り、情け容赦なくどんどんみんなに振舞っていた。前述のようにこれは元の度数がえらく高い。終盤にはカウンター席周りの何人かが完全にグロッキー状態になっていた。この瓶がキレイに空になってくれたことは僕としては願ったり叶ったりだったのだが、笑顔でアブサンソーダをガンガン飲ませていた友人を思い出すと、相当鬱憤が溜まっていたのだなぁ……と、彼の苦労が偲ばれるのだった。